「初心者が会計を勉強する前に」をまとめたブログシリーズ、「貝Kブログ(会計ブログ)~初心者が会計を勉強する前にみるブログ~」。今回は、番外編。会計から少し離れて、空売りがテーマです。
空売りとは何か?
「空売り(からうり)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。空売りとは、一般的に「投資対象である現物を所有せずに、他から借りて市場で売り、決済期日までに買い戻して株式を返却し、その差額で利益を得る取引」です。
実際に株式などの現物を持たずに売るので、「空(から)」と言っているのです。
株式などの現物が下落することを予想し、その価格差で利益を得るために、まだ所有していない株を売り、後で買い戻すことで差額を受け取る取引のことを指します。つまり、株価が下がることを期待して一時的にそのものを持たない売り方をすることです。
映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(原作の書籍「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」)をご覧になりましたか? この映画に登場する投資家たちは、他から現物を借りてきたり、後で買い戻したりというようなことを行っていませんでしたが、これは、どういうことでしょうか?
映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」
マイケル・ルイス著 『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』
この映画と原作の原題は『The Big Short』(ザ・ビッグ・ショート)といいます。「空売り」というのは、「ショートする」方法の一つです。映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」に登場する投資家たちは、他から現物を借りてきたり、後で買い戻したりすることなく、「ショート」しています。
ショートとは何?
ショートとは何でしょうか? 株式などの資産の価値が下がると利益を得ることができるように投資を行うことを「ショート」、あるいは「ショートする」と言います。実際にそのような投資をしている状態のことを「ショート・ポジション」と言ったりします。
資産の価値が下がると利益を得ることができるような投資の方法すべてをショートと言っています。「空売り」もその中の方法の一つですが、資産の価値が下がると利益を得ることができるような投資の方法には、様々あります。
以下では、ショートについてもう少し詳しく見ていくため、ショートと対になる言葉「ロング」も含めてみていきましょう。
投資家の予測
質問:投資で「ロング」や「ショート」という言葉を聞きますが、何のことですか?わかりやすく教えてください。
回答:将来、資産の価値が上がると予測し、その場合に利益を得ることができるような投資を行うことを「ロング」と言います。実際にそのような投資をしている状態のことを「ロング・ポジション」と言います。逆に、将来、資産の価値が下がると予測し、その場合に利益を得ることができるような投資を行うことを「ショート」と言います。
一般的に、投資は株式などの現物資産に対して行います。投資家は、この資産の価値が将来どうなるのかを予測します。投資家の予測は、大きく2つに分けられます。
投資家の予測
1.将来、資産の価値が上がると予測する。
2.将来、資産の価値が下がると予測する。
(厳密に言うと、3番目として資産の価値が上がりも下がりもしない場合も考えられますが、ここでは省略します。)
投資家が利益を得る場合
投資は利益を得ることを目的として行いますので、1のように価値が上がると予測した場合、その資産を購入するなどして、価値が上がった場合に利益を得ることができるような「アクション=投資」を行うことになります。
そう考えると、投資家が利益を得る場合は、大きく2つに分けられることがわかるでしょう。
投資家が利益を得る場合
1.将来、資産の価値が上がると利益を得ることができる。
2.将来、資産の価値が下がると利益を得ることができる。
ロングとショートとは何?
1の資産の価値が上がると利益を得ることができるように投資を行うことを「ロング」、あるいは「ロングする」と言ったりします。実際にそのような投資をしている状態のことを「ロング・ポジション」と言います。「ポジション」とは「状態」のことです。
この場合、対象の資産を購入し、値上がりした時に売却すれば利益が出ます。このように、単に資産を購入するという投資については「ロング」とわざわざ言わない場合も多いようです。しかし、実際には、「現物資産を購入する」以外の方法でもロング・ポジションを取ることはできます。つまり、資産の価値が上がると利益を得ることができるような投資の全てをロングと言っているのです。
このように考えると、「ロング」の反対である「ショート」も理解しやすいでしょう。資産の価値が下がると利益を得ることができるように投資を行うことを「ショート」、あるいは「ショートする」と言います。実際にそのような投資をしている状態のことを「ショート・ポジション」と言います。
資産の価値が下がると利益を得ることができるような投資の方法すべてをショートと言っています。資産の価値が下がると利益を得ることができるような投資の方法には、様々あります。
ショートする方法には様々なものがある
ショートの最も基本的な方法は、株式などの現物を「借りて」行う投資です。投資する側は、価値が下がると予測した資産を他から借りてきます。その借りてきた資産を先に売ります。それから、将来価値が下がったところで、買い戻して返却すれば、利益を得ることができます。つまり、先に売って後で買うという方法で利益を得ることが可能となります。
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ/しーでいーえす/Credit Default Swap)もショートする方法の一つと考えられています。映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』で登場しました。この映画の原題は『The Big Short』(ザ・ビッグ・ショート)で、作品の中ではショートする投資家たちが登場します。投資家たちは、サブプライム・ローンに関連する資産の価値が下がると予測し、ショート・ポジションをとりました。
映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」
マイケル・ルイス著 『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』
CDSとは何?
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は金融商品の一つですが、映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」では「ショートする道具」として描かれています。映画と原作の原題が『The Big Short』(ザ・ビッグ・ショート)です。
将来、資産の価値が下がると予測し、その場合に利益を得ることができるような投資を行うことを「ショート」と言います。作品中には、サブプライム・ローン関連の資産を「ショートする」投資家たちが登場します。
この映画の原作であるマイケル・ルイスのノンフィクション『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』からの引用です。
『CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)というのは紛らわしい名称で、じつはどこから見ても引換取引(スワップ)ではない。CDSは、おもに社債を対象とした保険契約のことで、半年ごとに保険料(プレミアム)を支払う固定金利付きの商品を指す。』
映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」
マイケル・ルイス著 『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』
CDSは保険?
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)とは保険です。そもそも保険とは何でしょうか?
生命保険(死亡保険・定期保険)を例に考えてみましょう。生命保険は、ある人(保険の対象者)に対してかける保険のことです。生命保険には様々な商品がありますが、ここでは簡単に、生命保険の死亡保険のうち、定期保険を例にしましょう。
死亡保険は、保険の対象者が死亡したときに保険金が支払われます。終身保険ではなく、定期保険の場合、保障の期間が決められており、期間が過ぎて生存していた場合は、保険金は支払われず、かけた保険料は戻ってきません。
CDSはもともと社債に対する保険だった
再び、マイケル・ルイスのノンフィクション『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』からの引用です。
『例えば、ゼネラル・エレクトリックの社債1億ドルぶんに掛けた10年物のCDSを買うのに、年間20万ドルを支払うとする。年20万ドルを10年支払うので、見積もり損失は最大200万ドル。もしその10年のあいだに、ゼネラル・エレクトリックが債務不履行に陥って、社債権者が何も回収しなかった場合、買い手の利益は最大で1憶ドルになる。』
上記の例でCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を生命保険(死亡保険・定期保険)と考えると、保障期間は、10年。死亡したときに支払われる保険金は1億ドル。支払う保険料は年間20万ドル。死亡は債務不履行ということになります。
かけた保険料は戻ってきませんが、年間20万ドル払えば、死亡(=債務不履行)したときに多額の保険金(=最大1億ドル)が手に入る保険がCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)ということになります。
CDSはもともと企業の債務である「社債」に対する保険でしたが、映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(及びその原作)の中では、それがサブプライム・ローン関連の資産に対する保険として波及していきます。
「社債」とは何? 詳細な説明は、こちら→「負債を勉強する前に~社債って何!?って話~」
映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」
マイケル・ルイス著 『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』
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